2027年4月、東広島市立高美が丘小学校に、音楽・図画工作・体育の授業を英語で行う【グローバルクラス】が開設される予定です。
英語に親しみ、多様な文化に触れられる教育として、期待される面もあります。しかし、「英語に親しむこと」と「各教科を英語で学ぶこと」は、同じではありません。
開設については、専門家からも強い懸念が示されている一方で、定員を大きく超える応募となる可能性もあります。
だからこそ、入学を検討する段階で、期待だけではなく、課題やリスクについても十分に把握していただく必要があると考え、市議会議員としてこれまで確認してきた内容をもとに、判断するうえで知っておきたいポイントを整理しました。
高美が丘小学校に関わる保護者や地域の皆さまにも、広く情報を共有していただければと思います。
確認しておきたい5つのこと
- 希望しても、入れないかも?
定員を超えた場合は抽選。特別枠も設けられます。 - 英語で教科を学んで、本当に大丈夫?
日本語の発達や教科学習への影響は、十分に確認されていますか。 - 6年間の中身、まだ決まっていない?
開設半年前で、教育内容や人員体制、中学校への接続など、大事なことが決まっていません。 - 開設は、議論なしで決まったの?
学校運営協議会や市議会で議論される前に、開設が固まりました。 - 車での送迎、他の子どもたちの安全は?
学区外からは保護者による送迎が必要。安全確保だけでなく、教職員や地域への負担も考える必要があります。
(項目クリックで詳しい説明へ)
■ まず、東広島市の公式サイトをご確認ください
市の公式サイトは、こちら(外部リンク)
このページでは、市の説明だけでは分かりにくい課題・リスクを扱います。
1.入学者は「くじ運」で決まる
グローバルクラスの定員(新1年生1クラス、26名程度)を超える応募があった場合、入学者は抽選で決まります。
入学を希望しても、必ず入れるわけではありません。
また、帰国児童と「英語によるコミュニケーションが可能な、外国につながる児童」には、特別枠が設けられます。校区外から通学する場合は、保護者による送迎が必要となります。
さらに、グローバルクラスは、原則6年間、クラス替えなしで同じクラスで進級します。
こうした仕組みについては、
- 一度の抽選によって、6年間受けられる教育が分かれること
- 特別枠を含めた選考の公平性
- 6年間同じクラスで過ごすことによる、人間関係の固定化やクラスへの帰属意識への影響
- 通常クラスとの違いが、教育機会の差や優劣として受け止められないか
- 児童や保護者の間に分断が生じないか
といった点が懸念されます。
これらは、グローバルクラスへの入学を希望する家庭だけの問題ではありません。通常クラスで学ぶ児童や保護者を含め、学校全体への影響を踏まえた、十分な検討と配慮が必要です。
なお、先行事例では、応募が定員の2~3倍となった例や、兄弟で抽選結果が分かれた例もあります。

2.英語で教科を学んで、本当に大丈夫?
グローバルクラスは、ただ英語に親しむためのクラスではなく、教科の授業を英語で行うクラスです。こうした教育手法は、一般に「イマージョン教育」と呼ばれています。
2027年度の新1年生については、音楽・図画工作・体育の3教科の授業を英語で行い、日本人教員と外国人の外国語指導助手(ALT)が連携して進めます。学年が上がるにつれて、対象教科(単元)を広げていく予定です。
問題は、「英語力」と「日本語の発達」の両立です。「実技だから大丈夫」とは限りません。
小学校期は、母語である日本語を使いながら、自ら考え、理解し、表現する力を大きく育てていく大切な時期です。教科の授業を英語で行うことで、日本語の発達や、日本語を使って考える力にどのような影響が生じるのかという問題があります。
また、
- 教科内容の理解や定着への影響
- 家庭学習の見守り・支援など、家庭に求められる取り組み
- 英語による授業についていけない児童への対応
- グローバルクラスで学び続けることが難しくなる児童への対応
などについても、慎重な検討が必要です。
この教育手法については、専門家の間でもさまざまな意見があり、見解は一様ではありません。私が確認した範囲では、国語・道徳を除く教科を英語で学ぶ本格的なイマージョン教育を実施している市立小学校は、豊橋市立八町小学校の1校のみです。
岡山市立石井小学校では、2005年度から約20年間続けてきた「図画工作を英語で学ぶ教育」を、2025年度から順次終了しています。教育委員会は、石井小学校の見直しは承知しているものの、詳細については調査研究を行っていないと答弁しています。
教育長は、グローバルクラスについて、より良い教育をつくるための「実証研究」であるとの趣旨を、市議会で答弁しています。
子どもたちが実際に学び始めてから検証するのではなく、開設前の段階で、子どもの発達や学習への影響をどこまで確認できているのかが重要です。

3.開設は決まっていても、6年間の中身は決まっていない
※ この項目の内容は、2026年9月11日の市議会一般質問時点で確認したものです。
イマージョン教育は、十分な準備が大前提の教育手法です。
にもかかわらず、2027年4月の開設まで約半年前の時点で、小学校6年間を見通した具体的な教育内容や指導体制に加え、中学校への接続など、教育の根幹に関わる多くの事項が決まっていません。
具体的には、以下のとおりです。
【小学校6年間の教育内容】
- 6年間を見通した教育課程
- 教育内容や指導方針
- 授業方法や教材
- 学年ごとの対象教科や単元
【人員などの実施体制】
- 日本人教員や外国人ALTなどの人員体制
- 継続して必要となる予算の裏付け
【制度・募集の詳細】
- 中学校への接続
- 募集要項の詳細(10月下旬に公表予定)
- 帰国児童および「英語によるコミュニケーションが可能な、外国につながる児童」の定義 など
また、広島大学や広島県教育委員会との連携が強く打ち出されていますが、必要となる人員の確約はありません。特に、教科を英語で指導できる人材の継続的な確保・育成は、極めて重要な課題です。
こうした課題を抱える中、今後、募集までの短期間に一部を具体化したうえで、実際に子どもたちへの英語による授業を始め、実践と研究を繰り返しながら、どのような形がよいかを探り、その先の教育内容をつくっていく考えです。

子どもたちの学力を、どのように保障するのでしょうか。
4.授業についていけない子どもはどうなる?
英語による授業についていけず、グローバルクラスで学び続けることが難しくなる児童が生じる可能性は、教育委員会も認識しています。その場合には、一人ひとりの状況を把握しながら「個別に丁寧に対応する」としています。
しかし、小学生で「ドロップアウト」を経験した場合、どうなるのでしょうか。
学習への自信を失ったり、学校生活に不安を感じたり、その後の成長にまで影響する可能性があります。また、途中でクラスを離れる児童が生じれば、ともに学んできたクラスメイトも、戸惑いや不安を感じるのではないでしょうか。
子どもが傷ついてからの「個別対応」では済まされません。だからこそ、開設前に慎重に考える必要があります。
5.開設ありきで、議論は後
グローバルクラスは、子どもたちの6年間の教育に大きく関わる計画ですが、開設が決定されるまでに、その具体的な内容について、市議会での議論は行われていません。
開設を公表したのは、2026年8月7日です。
地域への説明が行われたのは、8月5日の臨時の学校運営協議会の一度だけです。そこで、さまざまな懸念が示されていたにもかかわらず、わずか中1日で開設が公表され、示された意見については「今後の運営に生かす」とされています。
なお、教育委員会は、学校運営協議会への情報提供が遅れたことについて謝罪した一方で、私の一般質問では、「必要な情報提供は適切に行った」と答弁しています。

6.専門家「慎重な検討が必要」
大津 由紀雄 氏
プロフィール:慶應義塾大学名誉教授、関西大学客員教授。専門は、ことばの認知科学とことばの教育。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.を取得。文部科学省関係の委員会で委員を務めた経験もあります。
大津氏は、東広島市のグローバルクラスについて所見を公表し、2027年4月の開設には「なお慎重な検討が必要」との考えを示しています。
●「東広島市における『グローバルクラス』の開設について」(外部リンク)
●「東広島市における『グローバルクラス』の開設についての所見」(外部リンク)
7.車での送迎は、学校の安全に関わる
グローバルクラスの送迎については、子どもたちの安全だけでなく、教職員への負担や教育環境、地域との関係を含め、持続可能な運営体制を考える必要があります。
グローバルクラスは市内全域から児童を募集し、高美が丘小学校区外から通学する場合は、保護者による送迎が必要とされています。
保護者による送迎となれば、自家用車を利用することが想定されます。開設初年度は新1年生だけですが、学年が順次拡大すれば、送迎車両も増え、登下校の限られた時間帯に集中することが見込まれます。
そこで考えなければならないのが、登下校時の安全と、継続して運営できる体制になっているかという問題です。
例えば、
- 送迎車両は、どこで安全に乗り降りするのか
- 登下校する児童と車両の動線を、どのように分けるのか
- 混雑や事故を防ぐため、誰が安全管理を担うのか
- 教職員が対応する場合、本来の教育活動への負担にならないか
- 地域に見守りの協力を求める場合、それを将来にわたって続けられるのか
といった点です。
当然、通常クラスの子どもたちも、同じ校門や学校周辺を通って登下校するため、送迎車両に伴う安全確保は、学校全体の問題です。
また、こうした対応を教職員や地域が担うことになれば、その負担はグローバルクラスだけにとどまりません。教育環境や地域との関係にも影響する可能性があります。
長期にわたる取り組みとなるため、開設時に対応できるかだけではなく、5年、10年と続けても、学校や地域に過度な負担を生じさせない仕組みになっているかまで考える必要があります。

8.十分に理解したうえで、判断を
ここまで見てきたように、グローバルクラスには、子どもたちの「教育の機会均等」や「学力の保障」など、開設前に確認しておくべき課題が数多く残されています。
一方で、市は2027年4月の開設に向けて準備を進めています。
入学を検討される保護者の方には、「英語で学べる」という期待だけでなく、現在分かっている課題やリスク、まだ決まっていないことについても十分に確認したうえで、判断していただきたいと思います。
また、グローバルクラスは、入学を希望する家庭だけの問題ではありません。通常クラスの児童や保護者、地域を含め、学校全体への影響についても確認していただきたいと思います。
そして、実際にグローバルクラスが始まるのであれば、子どもが一人でも傷つくことがないよう、高美が丘小学校・東広島市教育委員会・広島県教育委員会・広島大学には、相当な責任と覚悟をもって、取り組むことが求められます。

9.もう少し、詳しく知りたい方へ
ここまで、特に重要だと考える課題やリスクを中心に整理してきました。
このほかにも確認しておきたい点があります。関心のある方に向けて、今後、順次追加していきます。
10.参考リンク
- 東広島市「グローバルクラス[Global Class]の取組」(外部リンク)
- (2026年8月7日)市長定例記者会見(外部リンク)
- (2026年8月17日)文教厚生委員会(YouTube)
- (2026年9月9日)大津由紀雄氏「東広島市における『グローバルクラス』の開設についての所見」(外部リンク)
- (2026年9月11日)重森佳代子 一般質問(YouTube)
- (2026年9月15日)大津由紀雄氏「東広島市における『グローバルクラス』の開設について」(外部リンク)
- (2026年10月5日)決算特別委員会(YouTube)
11.更新情報
本ページは随時更新します。重要な更新のみ、以下に記載します。
- 2026年10月1日 ページ公開
- 2026年10月4日 本文を一部修正、イラストを追加
- 2026年10月8日 決算特別委員会を踏まえて追記
※ 本記事の内容は、自由に参考・要約・再構成していただいて構いません。